敵に塩を送る

としひさより

『海音寺潮五郎著 天と地と』は、初めて読んでからの読み返しが非常に多い本の一冊です。戦国最強とうたわれた上杉謙信を描いた歴史小説で、1969年にNHKの大河ドラマにもなりました。大河ドラマ初のカラー放送でした。最初に読んだのは高校生の頃だったと思います。今でも、いつでも読めるように棚の一番近いところに積んであります。

史実として語られる『上杉謙信、敵に塩を送る』は、今でも比ゆ的に使われています。海に面していない甲斐の国(山梨県)の武田信玄に対し、周辺の今川、北条が戦略上、塩の輸出を停止し、結果塩不足に陥った武田信玄に、宿敵上杉謙信が塩を送ったという逸話です。ただ、「戦国大名が敵に無償で塩を送るなど、ありえない」「事実は逆で、謙信はこの機に乗じて高値で売りつけたのでは」といった声もあります。

私が、一番謙信らしいと思うのは、次の声です。
『今川氏真と北条氏康が、武田信玄へ塩の輸出を禁止した。武田領の甲斐・信濃・上野の民衆は、とても困窮した。事態を聞いた謙信は、長年の宿敵である信玄に「私は弓矢で戦うことこそ本分だと思う。塩留めには参加しない。だから、いくらでも越後(謙信の領国、新潟県)から輸入すると良い。決して高値にしないよう商人にも厳命しておく」と手紙を送った』というものです。
(としひさ)

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