曇り空に包まれた仕事部屋から、ぼんやりくすんだ外の景色を眺めながら、頭の中で明日の仕事のことを考えていました。目の端に、棚に並べた一冊の単行本の白い表紙が見えました。手に取ってみると、『永六輔(えいろくすけ)著 大往生』という本でした。
13年前、祖母の遺品を整理している時、文机の引き出しか、仏壇の前の棚の引き出しからか出てきて、読むことなく置いていた本でした。
手に取り、パラパラっとめくっていくと、まえがきに、『その頃、出演していた子ども電話相談室で、「どうせ死ぬのに、どうして生きてるの?」という質問に絶句した』、と書いてありました。私も絶句してしまいました。私には答えることが出来ない質問だなと、答えを悩む前に結論が出てしまいました。
本の最後は、著者が、ご自身に向けて書かれたユニークな弔辞でした。自分の葬式で、自分で書いた弔辞を読んでもらうのも良いかなと、ちょっと思いました。妻・子から「ふざけないで」と怒られるかな、とも、思いました。
信心深かった祖母が持っていた本です。本を置き、何気なく、指先を口の近くに持って行ったとき、少し線香のにおいがしたような、気がしました。
(としひさ)