特別な帰省

としひさより

わが家には家族ぐるみで付き合っている、親が同世代・子どもが同世代の家族がいます。子どもたちは、みんな兄弟姉妹のように接しています。わたしも妻も、自分たちの子どものように接しています。

そんな家族の1人、いまは熊本に住んでいる男の子から、「8月13日夕方帰ります」と連絡が入りました。今年7月に入籍した女性と一緒に帰って来るとのことでした。

13日、駐車場に車を停め、家に入ると、『洋間』と呼んでいる部屋から懐かしい笑い声が聞こえてきました。男の子、そして彼の妻となってくれた子が笑顔で迎えてくれました。『笑顔の素敵な子だな』と思ったこと、『礼儀正しい子だな』と思ったことは覚えています。2人の結婚がうれしくて、あとは何を話したかよく覚えていません。

ただ1つ、「子どもさんは?」と聞いたことは苦い思い出として残っています。男の子が「まだ入籍したばかりなので」とニコニコしながら答えてくれました。わたしは一瞬、男の子の言葉を理解することができませんでした。「子どもは実家に預けてきました」という答えが返って来るものと思い込んでいました。その場は男の子の言葉を聞き流し、一旦部屋を出て会話を反芻しました。

子どもがいると思い込んだのは、その日の朝のことでした。わたしの妻と長男の話す声がどこからともなく聞こえてきました。『子どもを実家に預けて来る』という言葉が聞こえたような気がしました。わたしは、きょう帰って来る男の子たち夫婦のことと、なぜか思い込んでしまいました。2人のことか、妻と長男に確認することをしませんでした。

『子どもを預けてきた』と思い込んでの「子どもさんは?」の問いかけでした。問いかけられた方は「子どもさんはまだいないの?」と聞かれたと思うしかない問いかけでした。結婚している人に「子どもはいないの(いるの)?」と聞くことは、どんな相手であってもわたしの中では絶対の禁止事項です。すぐ洋間に戻り、説明し、謝りました。2人はニコニコしながら、わたしが何を謝っているのかよく分からないといった感じで話を聞いてくれました。ホッとしました。

わたしの失策はありましたが、夜は久しぶりの彼の帰省、それも妻となってくれた子を紹介してくれるという特別な帰省のため、おおいにメチャメチャ盛り上がりました。少し場が落ち着いた時、「(男の子と)出会ってくれてありがとう」と声をかけました。男の子の横で、ニコッとうなずいてくれました。
(としひさ)

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