祖父の思い

としひさより

きのうは、子どもたちが、お墓までご先祖様をお迎えに行ってくれました。お墓は、家から歩いて5~6分の距離にあります。今のお墓は、祖父が建てたものです。縦横2メートル位のお墓の中に、ご先祖様が一緒に安置されています。その前は、それぞれバラバラでした。30センチ位の間隔で、小さな墓石が並んでいました。きれいに四角く切った墓石もあれば、自然の石をそのまま墓石にしているお墓もあったと記憶しています。祖父が、『墓』を作ろうと発願したのは、自身の死の直前でした。

新しいお墓を作ると聞かされてから、しばらくたったある日のことです。入院先の病院にお見舞いに行くと、「としひさ、これ」と、1枚の紙を手渡されました。紙には、鉛筆書きのお墓の絵と、いくつかの文字が書かれていました。「お墓の正面にはこの文字を刻むように」、祖父が指さしたのは『南無阿弥陀仏』の文字でした。かなり意外でした。

意外と感じたのは、当時、私の中では、お墓の正面は「○○家之墓」が常識だったからです。今では、正面に『南無阿弥陀仏』や、いろいろな文字を刻んだお墓を目にするようになりましたが、当時の私には考えられませんでした。常識的な判断をしていくのが祖父だと思っていました。祖母から、「おじいちゃんは、石橋をたたいても渡らない人って言われていたのよ(笑)」と聞かされたこともありました。慎重な祖父の大胆な発想にかなり驚かされました。

『南無阿弥陀仏』は、我が家の宗旨(派)である浄土宗の念仏です。宗教、信心については、小さいころから仏壇の前に座る祖母の姿を見てきました。いつのまにか「宗教は祖母の専売特許」的なイメージが出来上がっていました。そこにいきなりの、祖父の『南無阿弥陀仏』です。かなり仰天しました。(おじいちゃんゴメンナサイ)

後日、祖父が思い描いた通りのお墓が出来上がりました。どんな思いでお墓を作ろうと思ったのか、どんな思いで『南無阿弥陀仏』と刻んだのか、祖父の思いを聞かないままでした。
語り掛けてみようと思います。
(としひさ)

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