ねこ舌

としひさより

ある日、見慣れぬ洗面器がフロ場に置いてありました。妻に聞くと、チョビ(我が家のネコ)の水飲み専用とのことでした。

水飲み場は台所にも作ってあります。キャットフードを入れる皿のすぐ横です。『わざわざフロ場まで飲みに行かなくてもいいのに』と思いましたが、なぜか、時々フロ場まで行きます。

チョビが水を飲みに行く時間と、わたしがフロに入る時間が重なることがあります。先日もそうでした。湯船に入っているとドアの外からニャーニャー鳴く声、チョビの「ドアを開けてくれ」の声です。

フロのふたを湯船の上に半分広げ、チョビ用の洗面器に水を入れ、定位置であるふたの上の奥のほうに置き、ドアを開けました。トットッと入って来てふたの上に飛び乗ります。わたしも寒くて、ふたの閉まってない方から湯船にからだを滑り込ませました。

肩まで沈むと、目の前にチョビのしっぽと洗面器があります。なぜかチョビは水を飲もうとしません。しばらくすると、わたしのほうを向き、ふたの端から首を伸ばし、湯船のお湯を飲もうとします。水温計は40度です。「おいおい、熱いよ」と言いながら、手のひらを鼻先に持っていき、ストップをかけました。手をはずすとまた飲もうとします。『暖かい水を飲みたいのかな』と思い、洗面器の水をぬるま湯に変え、鼻先に持っていきました。迷わず飲み始めました。

きのうの夜は、ぬるま湯ではなく、40度のお湯をそのまま置いてみました。迷わず飲み始めました。チョビは『ねこ舌』ではないのかと、ふと思ったことがきっかけで、『ねこ舌』の由来を調べてみました。

チョビと一緒に暮らし始めて18年目です。いろいろなことを考え、経験させてくれる不思議なネコです。いまは妻の車の中でくつろいでいます。
(としひさ)

タイトルとURLをコピーしました