水滸伝

としひさより

時間が空いた時、たまに県立図書館に寄ることがあります。寄って、北方謙三さんの歴史小説『水滸伝』を借りてきます。全19巻あります。2~3巻ずつ借ります。借りられるのは最大30日間です。空いた時間に読むので、1巻しか読み終わらないことがあります。
読んでいない巻も、いったん返さなければなりません。次に借りる時、何週間も、何ヵ月も経っていることがあります。
続きの巻から借りると、前のあらすじが分からなくなることがあります。前回読んだ巻から借りて読み直します。なかなか先に進めません。去年の初めから借り始めて、今、17巻です。

その17巻の中に、頭をうまく整理できない場面があります。【友達のためについた噓(うそ)】について語られる場面です。楊令という少年に、魯達という人が語り掛けます。

魯達:「お前は噓という言葉を使ったが、何もかも王進殿に語っているのか。たとえば、張平はこの家へ来て、いろいろやったろう。それを、語ったか?」
(楊令の心の声):張平の盗みについては、すべて隠し通してきた。しかしそれは、自分のためでなく、張平のためだ。責められることではない。
魯達:「おまえはいま、張平のために隠したことだと思ったろう。それは違うぞ。おまえの、張平に対する思いのために隠したのだ。だから、お前のために隠した(嘘をついた)
(楊令の心の声):わからなくなってきた。頭の中がうまく整理できない。   

という場面です。語りの中に出てくる王進殿という人は、張平少年の盗みを全てわかっています。張平少年も、王進殿や楊令の思いに応え、盗み癖を直し、立ち直っていきます。ただ、この個所のテーマをわたしは『立ち直りではない』と読んでしまったのです。

『友達のためについた嘘』そのものにスポットを当て、『楊令少年の成長のため、自分で自分の「内面の問題」として、深く掘り下げさせようとする魯達』と読んでしまったのです。わたしの頭の中も、楊令少年と同じようにうまく整理できなくなってしまいました。

「内面の問題」という言葉は、「立原正明著 冬の旅」という本を読んでから(ブログ7.2)、わたし自身を見つめる時のキーワードの1つになりました。
今度時間が空いた時、『友達のためについた嘘』について、自分の内面をじっくり掘り下げてみようと思います。
(としひさ)

*場面描写で出てくる人名・注釈等は、わたしが付したものです。

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